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『文化財を知り、考える~アートとテクノロジーの融合が生み出すこと~』(美術Ⅰ校外連携授業)

2023/12/2

 美術Ⅰ『文化財を知り、考える』の授業では、第3回目の活動を長寿寺(滋賀県湖南市)と大塚オーミ陶業株式会社(滋賀県甲賀市信楽町)のご協力で実施しました。今回のテーマは「文化財のこれからの活かし方~アートとテクノロジーの融合が生み出すこと~」です。

 

 まず最初に、黒い布の下に隠されている約20センチ四方ほどの「陶板」を触ります。そして、表面にある筋(線)のふくらみから、そこに何が描かれてあるかを考えます。
 これは、長寿寺が所蔵されている室町時代の掛け軸「地蔵曼荼羅図」を、大塚オーミ陶業が陶板により複製した際の‘試作サンプル’です。目の不自由な人やご老人も含めて、多くの人に触れてほしいという藤支良道住職の想いと、大塚オーミ陶業が持つ最先端の技術により、実寸大に再現されました(大塚オーミ陶業さんは、「大塚国際美術館」の数々の壁画や絵画の陶板を製作されているメーカーです)。
    さらに、長寿寺からお持ちいただいた実物の「地蔵曼荼羅図」を鑑賞しました。中心に六本の腕の地蔵菩薩が描かれ、その周りを約1万2,000体の小さな地蔵菩薩が取り囲んでいる、大変珍しいものと言われています。制作されてから約1200年が経ち、かなり傷んでいたため、数年前にクラウドファンディングを用いて修理されたものです。表面についた無数のしわや折れた箇所を、藤本松雲堂さんが一か所一か所、丁寧に修復される様子も映像で拝見しました。「文化財の保存は多くの人の‘献身’でかろうじて成り立っている」という藤支住職のお話は大変印象的でした。
    お寺を訪れたご老人が、「ああ、ありがたい」と言って、この複製サンプルを抱きしめられたそうです。
    文化財とは何か…文化芸術の在り方、保存や活用を考えるヒントを得ることができました。

 

【生徒の感想】

・文化財について語り継がれていくことで、文化財がより生かされるのかなと思いました。他にも知らないだけですごい文化財が色々あると思うので、とても興味が沸きました。

・目の見えない人に、文化財などの立体的な形なら伝えることができても、やさしそうな表情は、うまれつき目の見えない人は人の表情そのものをみたことがないから、伝えることができない。目で見る以外の方法を、テクノロジーを利用してつくったらどうかと思った。

・文化財を未来に伝えていくために、修復をする職人さんたちや、陶業の方々など、大勢の人が献身していることを知りました。こういう方々が今までにもいらっしゃって、現在の私たちにも文化財が伝わっているのだと感じました。

・障害の有無や年齢に関わらず、色々な人が文化財に触れられるようにすることも、文化財保護の一環だと思った。

・文化財が修理に出される数が意外と少なく、みんなの‘伝えたい’という思いがなければ成り立たなくなっているほどなのだと感じた。

・今回の授業で、お地蔵さまの役割をはじめて知った。仏様の役割や伝説を知っていると、仏画や仏像をもっと面白く感じられそうだと考えた。陶板による文化財の複製は、文化財をより身近に感じられる(触ったりして)良い方法だと思った。

・どの人も文化財の保存に対する熱意がすごかった。未来の人に文句を言われないような修復をしている、というプロ意識と自信を持っていることが印象に残った。

・文化財の修理は、自分が思っていた何倍も地道で細かい作業であり、驚いた。藤本さんの、未来の職人さん達に修理をまた託して、保存していくという考えに感動した。文化財は、ただ、現代の技術を用いて活用するだけでは、後世には残らない、と考えさせられた。

・目の不自由な人が陶板をなではせずに抱きしめて喜んだというのが心に残った。お地蔵さんを感じられるかどうかというより、自分達の感じられる文化財にしてくれたことに感動されたからかな、と思った。

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滋賀県立膳所高等学校