2022/12/28
12月21~22日、県内の連携校を含めた7校29人のサイエンスプロジェクトメンバーで東京・筑波の研究施設や企業を訪問し、研修を行いました。
・1日目AM
茨城県つくば市にある国土地理院に併設されている「地図と測量の科学館」を訪問し、地図の作成や測量の技術について学びました。人工衛星による測量や観測についても解説されており、午後のJAXAでの研修にも通じる学びとなりました。
・1日目PM
同じく、つくば市にあるJAXA(宇宙航空研究開発機構)筑波宇宙センターを訪問しました。施設(人工衛星の管制室等)での研修の後、JAXA研究員の大門優氏による解説付きで展示館において研修し、大門様にご講義をいただきました。講義では、研究開発から製品化・普及までの流れや、開発におけるデータ解析の役割についてお話しいただきました。また、生徒による研究発表を行い、指導・助言をいただきました。
【講義】
講師:国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 研究開発部門 主任研究開発員 大門優 様
講義題:日本の宇宙開発における解析の役割
【研究発表】
1.矢羽根の枚数や形状による矢の軌道への影響
2.ハッシュ関数を用いた機械学習の高速化
【生徒の感想より】
◎今回の研修で特に感じたのは、実物を見るということの大切さだ。JAXAの施設や衛星などについて、写真などでは多く見たことがあったが、実際に見る機会は初めてで、そのスケール感や、物語ではない現実に存在するものという実感が湧いた。昔アメリカに住んでいた頃、スミソニアン博物館でも宇宙関連の機体を見たことはあったが、博物館ではない実際の仕事場を見ることができたのは貴重だと感じた。自分の研究分野は基本ソフトウェア内で完結してしまう部分があるので、このようにハードウェアの要素に触れることで、より研究の方法のアイデアが広がると感じた。
・2日目AM
2日目は東京に移動し、まず株式会社TIER Ⅳ(ティアフォー、創業者 兼 最高技術責任者:加藤真平東京大学准教授)を訪問しました。ティアフォーは、オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware」の開発・普及を主導している、2015年に設立されたディープテック・スタートアップです。「自動運転技術の民主化」を目指し、Autowareを無償で公開。現在世界で500社以上が使用し、自動運転用OSの利用社数としては世界トップを誇っています。各分野の優秀な企業と手を組む水平分業化で、グーグルなど世界の名だたる競合相手に戦いを挑むティアフォーを訪問させていただき、自動運転に関わる技術開発の現状と課題等について、具体的にお話しいただきました。また、自動運転に使用されているセンサーを可視化した映像を見せていただいたり、ガレージで自動運転車の一部を見せていただいたりと、自動運転に関する最先端の技術について知るとともに、ディープテック・スタートアップを将来のキャリアの選択肢として考える契機にもなった充実した研修となりました。
※ディープテック・スタートアップ:高い問題解決力を秘めた専門性の高い革新的な技術に基づいて、新たな価値を生み出し、社会にインパクトを与える企業。
【生徒の感想より】
◎自動運転というのは、単に高性能なAIがあればいいわけではなく、カメラやセンサーといった様々な分野の技術の集合体なんだ、すごいスケールのでかいテーマだなと思いました。技術開発だけでなく法整備などの社会的な課題もまだまだあると思いますが、早く乗ってみたいと本当に思いました。また会社自体の方針として、技術を独占するのではなく公開して民主化を目指すという姿はとても尊敬できるものだなと感じました。会社の内装もとても現代的で快適そうなスペースでリアルに就職してみたいぐらいです。
◎実際に開発している様子を目の当たりにして、今まで少し遠く離れているように感じていた自動運転技術をより身近に感じることができた。私の将来の夢はドラえもんを作ることなのだが、最近友人と話す中で研究者か開発者、個人か複数かなど、どの立場になるか迷っていた。しかし今回TIER Ⅳに行ったことでベンチャー企業の有り様を知り、ベンチャー企業で研究開発をするということにかなり興味がわいてきた。ベンチャー企業はリスクもあるがきっと楽しいと思うので、選択肢として残しておきたいと改めて感じることができ、いい経験となった。
・2日目PM
東京大学を訪問し、北澤大輔先生に持続可能な漁業のための技術開発についてご講義いただきました。その後、生徒による研究発表を行い、東京大学の先生方に指導・助言をいただきました。
【講義】
講師:東京大学生産技術研究所 北澤大輔 教授
講義題:環境にやさしい養殖
*東京大学生産技術研究所 大島まり 教授にご講義いただく予定でしたが、諸般の事情により、急遽変更となりました。
【研究発表】
1.AIはコミュニケーションを有意義と考えるのか
2.メネラウスの定理のn次元拡張
【生徒の感想より】
◎養殖などの農学関連は、普段自分が研究しようとしている分野とは少し離れているが、生物学を基礎とした分野なので繋がる部分もあると感じた。特に農学は現代の食料問題に大きく関わっていて、社会問題への取り組みとして重要だと思った。養殖の他にも栽培漁業や、あるいはゲノム編集による改良なども食料問題への解決策として研究が進んでいて、こういった研究は最適策を一つ探すのではなく、さまざまな案を出していく中でより良いものが生まれていくのだと考えた。
◎まず、今漁業資源が枯渇していることに驚いた。実際に漁をしているところを見ることは少ないが、魚が店頭に並んでいるところはよく見るからだ。そして、その問題を解決するために、養殖をするのだが、ひとえに養殖といってもさまざまな種類、課題があることがわかった。特に、台風などの被害を軽減、無効化するために浮き沈みすら生簀を作るという発想には感動した。私はどちらかと言えば近大マグロのような完全養殖の方に興味がある。これがさまざまものでできるようになれば問題が解決されるのではと思う。しかし、人工種苗は安定性に欠けることなどの課題もある。世の中のことは何でも思った通りいくわけではないし、現場検証や現地の話を聞き、課題を見出し、解決に向けて考える大切さと難しさに改めて気づけた。私たちも人ごとと捉えるのではなく、世の中の問題に取り組んでいきたい。