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「建築ってなんだろう」伊東豊雄さん講演会

2022/12/27

 12月20日(火)、芸術科特別授業(芸術Ⅰ)として1年生を対象に、建築家伊東豊雄さんの講演会を大津市生涯学習センターで開きました。日本芸術院会員を学校に派遣する文化庁の「子供  夢・アート・アカデミー」事業により実施しました。
 伊東豊雄さんは「せんだいメディアテーク」や「みんなの森ぎふメディアコスモス」、「台中国家歌劇院」など国内外で多くの建築を手がけ、「建築界のノーベル賞」といわれるプリツカー賞を受けるなど、世界で高く評価されている建築家のお一人です。
 講演は、住居とはそもそも何か、「建物」と「建築」の違いや人の暮らし方による変遷、日本と海外の違い…など、お話が広がりました。故郷の風景、茶碗に宿る美と力…そして現代の都市や建物がもたらす課題から「建築の内部に自然を蘇らせる」展開を、建築の過程や完成した画像、アニメーションを交え説明されました。2011年の東日本大震災後の「みんなの家」の取組みを通して考えられたこと、人と接すること、挑戦することの大切さを語られました。
 講演会は生徒が司会進行を務めました。お話のあとの質疑応答では、生徒たちは次々と自分の想いを伝え、最後に代表生徒のお礼の挨拶と花束贈呈を行いました。
 この日、伊東さんは朝に東京を出て滋賀へ来られ、講演のあと東京へ戻られました。お忙しい中、高校生に何か伝えたい、その想いが突き動かしているのでしょう。舞台袖や楽屋などで、気さくに生徒と語られる姿がありました。
 演題「建築ってなんだろう」という伊東さんからの問いかけに、今、どう答えるでしょう。ご本人の姿と言葉に直に触れ、建築や建築家という漠然としたイメージは、具体的な像に変わりました。たくさんの学びや気づきがあったのではないでしょうか。
 本校生徒にとって大変貴重な機会を頂きましたこと、心よりお礼申し上げます。

【生徒の感想より】
・建築についての考え方が変わった。建物を設計するというのは、利用する人の快適さと人とのつながりを感じさせることが大切だとわかった。自然の中から規則性を見つけたり、言葉から建築への関わりを感じたりすることができる伊東先生は本当にとても繊細で凄いと思った。
・建築は想像したものを見えるように形に変えると同時に、見えない力もそこに含ませているということを知って感動した。以前から建築に興味はあったが、今日の講演会を聞いて建物の構造だけでなく作った人の思いや意味にも興味を抱くようになった。
・私の将来の選択の幅を広げたし、自らの考えを改めるいい機会になったと思います。
・「混沌とした自然の中に人間にしかできない秩序を作り出したときに建築が誕生した」と聞いて、なるほど、と深く感銘を受けた。
・伊東先生は、混沌とした自然の中に「建築は秩序をつくる」とおっしゃっていました。私は、国語の授業のときに、絵画は、作者の気持ちを表した混沌としたものであるという文章に触れました。建築という芸術の絵画との違いはここにあると思いました。
・建築というものについて自分なりに考えることができた。建築がアルゴリズムを使って作られているという話を聞いてとても驚きました。利便性も考えた建築物を自分たちで一から考えるのは、とても大変そうだけど、とても楽しそうだとも思った。
・「屋内化された広場」というワードに心が動かされた。たくさんの人が繋がり、自然を感じる。公共建築を主としている伊東豊雄さんだからこその言葉だと思った。
・今回の講義で特に印象が残った話のひとつに、建築を考えるとき、どのようなものが人に求められているのかをよく考えるというのがあった。この考え方は、人のために何かをしようと思うときに非常に大切な考え方だと思うので、私も常日頃から意識したい。
・地震が起きて家がなくなってしまうと仮設住宅を建てるのだと当たり前のように考えていましたが、それは違うんだと気づかされました。確かに仮設住宅は身を守るという役割を果たしています。しかし、みんなで何かをしたり、同じ空間に人がいるという安心感を得たりということはできません。震災の時だからこそ人とのつながりを感じていたいと思うし、「みんなの家」を建ててもらった人々の喜びが想像できました。
・建物一つで環境が変わる、自由度が高まると思うと、建築の力は偉大だと思った。
・伊東さんのように自分が生み出したものによって人を癒したい。
・伊東先生が「みんなの家」を芸術的でない建物だとおっしゃっていたのが印象的です。私は、写真を見てとてもあたたかさのある建物だと感じました。”自分の本当に心から出た思いを動力に物を作れば、その気持ちが他人に届く”という考え方に感銘を受けました。実際に、先生の思いは「みんなの家」を利用する人たちに届いていたのだと思います。
・人間の活動のすごさを学んだ気がした。人の人に対する思いが込められているものが増えれば、より良い社会が作られる、人々がより幸せな生活を送ることに繋がる。どのような分野の職に就こうとも人に対する思いを忘れずにいたいと感じた。
・私は都市の均質化の話の時に出てきた「田舎に来るとなんだかほっとするんだよね」という言葉がとてもしっくりきて、とても印象深い言葉だった。なぜなのか今でもはっきりしておらず、理由もごちゃごちゃしている。自分なりに解釈できるまで考えたい。このような考えるきっかけとなる講演が聞けて本当に良かった。
・伊東豊雄さんにお会いできたことに興奮した。伊東さんの建築はどれも空間のゆとりがあるように思えた。そしてその使い方が人々に委ねられているような自由な雰囲気を持っていた。実際に伊東豊雄さんの建築を見に行きたいと思った。
・今回、「建築とは何か」という問いに対する伊藤さんの解釈を聞いて、正直なところ今でも私にはその本当の意味が分かっていないように感じています。ただ、私は人生を送る中で、大好きな芸術に触れ、楽しむ中で分からないなりに自分なりに考えを深め、学びや発見の多い豊かな生活を送りたいです。この先芸術を楽しむ余裕を持ちながら、芸術の範囲にとどまらず自分の視点や考え方を広げて、長い人生をかけて「建築とは、芸術とは、私が社会の一員であること、生きている意味」などについて考えていけたらいいなと思います。
・難しい問いに、わかりやすく話されているのがすごかった。自分もそうなれるように頑張りたい。

〈後日、伊東先生から届いたメッセージ〉
 生徒の皆さんとともに、とても楽しくレクチャーをさせていただきました。 特に最後のご挨拶をいただいた生徒さんのレクチャーの感想は、 その場で自らの考えを見事にまとめてくださっており、感激いたしました。 ありがとうございました。

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